正智深谷高等学校 大航海時代の幕開け

2017年度、正智深谷高等学校は、来るべき大きな教育変革、そして社会から求められる学力の変化に対応するべく「正智深谷高等学校イノベーション計画(Shochi-Fukaya High shool Innovation Plan)」を掲げた。加藤慎也校長は、この計画の名称としてそれぞれの頭文字を取り「SHIP(シップ:帆船)」と名付け、この地球規模の転換の大海原に帆をいっぱいに張って、出港する決断をした。正智深谷高等学校の大航海時代の幕開けである。by 本間勇人 私立学校研究家

同校のミッションは、次の3つである。

①自己肯定感を育み、他者を認めることができる人を育てる。
 
②問題解決に協働して取り組み、他者に貢献できる人を育てる。
 
③夢を持ち、そのための地道な努力を継続できる人を育てる。
 
これは、世界に目を向けた21世紀型教育のいくつかのキーワードに置き換えてみると、「マインドフルネス」「PBL」「コラボレーション」「コントリビューション」「グロースマインドセット」「グリット」などになる。
 
 
加藤校長は、英語の教員でもあるから、正智深谷高等学校の精神が、世界につながっている、むしろシリコンバレーに集結している世界のイノベーターであるクリエイティブクラスが希求しているマインドフルネスが同校にあることに気づいている。
 
ただ、この大切なリソースが学内では当たり前の存在だったし、それがゆえに埼玉エリアを超えてインパクトを与える重大な使命があるとまでは教職員全員が意識してきてわけではなかった。県立高校王国埼玉にあって、自治体の教育は、どうしても自治体に貢献する人材をとならざるを得なかった事情もあっただろう。
 
しかし、もう高校生はデジタルネイティブである。すでに世界の問題は自分たちの問題と直結していると感じ始めている。私立学校として、自治体と世界を結びつけるリーダーシップを発揮するべく、大航海に船出する意志決定をしたのである。
今回訪れたとき、ちょうど新生徒会役員・執行委員の認証式だったが、彼らは、世界で様々な問題を解決していく姿勢は、自分たちの学園生活においてチャレンジする行為や精神とシンクロしていると感じている。
 
 
だから、加藤校長は、認証式にあたり、新メンバーに、認証状を手渡す式を行うのではなく、自己実現に燃え、互いに励まし合い、挑戦する想いをしっかり共有する時間だと語り、一人ひとりと熱く握手を交わしていった。メンバー一人ひとりの想いと挑戦する行為と精神は、そのまま世界を変える準備になるという気持ちをこめて。
 
<SHIP>とは帆船という意味もあるが、<在り方>というマインドフルネス状態を表現する接尾語でもある。<friendship><leadership><communityship>・・・。21世紀型教育とは、多様性の時代にあって、たしかに4技能英語力、PBL型の探究授業、ICTは欠かせない。しかし、それらがたんなる手段であってはならない。文化も価値観も考え方も異なる人々と協働して、人類共通の諸問題を解決していくマインドが必要だ。
 
そのマインドのあり方をカタチにして共有するために、4技能英語力、PBL型授業、ICTは欠かせないチカラなのである。そのチカラを何のために使うのか。未来をつくる力として、いまここでカタチにするために使うのである。未来は、正智深谷高等学校の学園生活そのものの中に、潜在的に存在している。
 
 
その潜在的なパワーを体現したロールモデルが、今年東京大学文Ⅲに合格した藤井君だ。高3の7月まで、吹奏楽の部活で活躍しながら、英文学という領域で世界の本質を見出し、創ろうとするモチベーションを持ち続けた。正智深谷高等学校の先生方とPBL型のゼミで、東京大学の入試問題が投げかける問いの本質を探究した。マインドフルネス、グリット、リーダーシップ、コミュニティシップ、コントリビューション、クリティカルシンキング、クリエイティブシンキングなど21世紀型スキルが藤井君のマインドには有機体として大きく成長した。
 
加藤校長は、東京大学に行くかどうかではなく、そこにチャレンジした時の藤井君のマインドのあり方を、全校生徒と共有していきたいと。おそらく、正智深谷高等学校のこの大航海の挑戦から、<Growth Mindship>という新しい言葉が誕生するのではないだろうか。
 
 
加藤校長に学園内を案内してもらったとき、とにかく生徒と教師の距離が違いと感じた。好奇心に充ち、探求心旺盛で、対話力に満ちた生徒であふれていた。
 
そして、廊下を歩いていると、授業の始まりや終わりに、合掌している生徒の姿が目に入った。同校には、世界が今最も欲しているマインドフルネスを内燃させる仕組みがすでにある。世界に羽ばたく人材のエネルギーの源泉は、やはり正智深谷高等学校にもあると確信した。
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