PBL

第4回「新中学入試セミナー」in 和洋九段ー自己変容型マインドセットが育つPBL

2月16日(日)和洋九段女子「フューチャールーム」で、21世紀型教育機構(21st CEO)主催の「新中学入試セミナー」が開催されました。 

by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家

セミナーの幕開けは、首都圏模試センター取締役教育研究所所長の北一成氏による最新の中学入試情報です。千葉・埼玉・茨城・東京・神奈川の私立・国公立中高一貫の動向を広く分析、首都圏の中学受験生の数が6年連続で増加していること、なかでも思考力入試やプログラミング入試、PBL入試といった「新タイプ入試」を実施している学校が増加している背景について講演していただきました。6年先、あるいは10年先の社会の変化を見越した保護者が、偏差値に依存しない学校選択をしている傾向を伺い知ることができました。

和洋九段女子中学校・高等学校校長の中込先生からは、和洋九段のPBL授業についての説明をいただきました。和洋九段では、全科目全教員が同じ構造のPBLを実践しているということです。その徹底ぶりがあるからこそ、「PBL入試」と銘打った入試が実施されることになったわけです。

「トリガークエスチョン」→「個人ブレスト」→「グループブレスト」→「プレゼンテーション」→「共有」という全教科共通構造のPBLを通して、生徒は自分を表現することに目覚めていきます。その変容を生徒自らが創り上げているところにPBLの神髄があると中込校長先生は語ります。

休憩後、オーディエンスの保護者や教育機関関係者は、2つの会場に分かれて和洋九段中学の中学3年生たちがナビゲーター役を務めるPBL型のワークショップに参加しました。

最初はとまどっていた「大人たち」も、生徒たちの指示にしたがって「SDGsすごろく」をしていくうちに、すっかりSDGsの目指す世界に入り込み、「森林火災で〇番のカードを失う」とか「環境保全に協力してコインをゲット」などといったマス目に書かれた文言に一喜一憂します。

人生ゲームが個人の成功を目指しているゲームだとすれば、「SDGsすごろく」は地球全体の幸福を目指しているゲームです。そのような大きな問題を扱っていながら、和洋九段の生徒は押し付けがましい態度がまったくなく、それでいて大人たちをしっかりファシリテートしている様子が素敵でした。

PBLは「教える⇔教えられる」という関係から「気づき合い」の関係へと参加者を変容させるのです。「持続可能な開発目標」が子どもたちにとってより切実であることは、21世紀を生きる彼らにとっては当然のことです。ゲーム終了後に参加者から「17のゴールのうちどのゴールに最も関心があるか」という質問があった際には、それぞれの生徒がしっかりと自分の意見を述べていて、その姿は頼もしくさえ感じられました。

続いて行われたのは、PBLを実践している学校の先生と生徒たちとのパネルディスカッション。新タイプ入試とPBL型の授業の関係や、生徒の未来にどうつながっているかというトークセッションです。

和洋九段教頭の新井誠司先生からは、この2月に実施されたPBL入試の動画の紹介がありました。受験生同士あるいは受験生と在校生が入試というイベントで交流できることが、「日本で一番入試らしくない入試」というキャッチフレーズ通り、楽しい雰囲気につながっているということです。そして、そういった楽しい雰囲気の中で「共創」することの意義をお話されます。論理性や創造性に加えて、他者を受容するコミュニケーション力などが重視されて選考が行われているといった解説がありました。

聖学院21教育企画部長の児浦良裕先生と工学院教務主任の田中歩先生からは、思考力入試で問われている力と入学してくる生徒についての紹介がありました。

児浦先生は、レゴを使った表現が生徒の潜在力を引き出すことを、実際の生徒の作文を使いながら説明します。思考力入試で合格してくる生徒は2科4科という評価尺度では必ずしも良い成績でないこともあるが、入学してから成績や才能をぐんぐん伸ばしていくことが過去の事例から「分かっている」ので、自信を持って特待生を出しているということでした。

田中先生は、工学院でも、和洋九段のPBL型授業と同様、ステップ型のプロセスを経た思考力入試を実施していて、受験生が何かに気付き変容する瞬間があるということを指摘します。そのような生徒は、学校に入ってからも自分のやりたいことを見つけ、それを探究していこうという自己変容型のマインドセットを持つようになるということでした。

首都圏模試センターの北一成所長は、新タイプ入試の受験生の受験率や入学率の高さに触れ、学校のカリキュラムがよく分かったうえでそういった入試を受験している層が増えていること、そして4年ほど前にはそういった入試に批判的だった学習塾の態度もだいぶ変わってきたことを指摘します。

パネラーの先生方が一通りお話をされた後、和洋九段の生徒たちとの対話が始まりました。PBL型授業が自分をどのように変容させたかという質問については、多くの生徒が、プレゼンテーションなど自己表現の場を経験することをきっかけとして、自分が変わったと話してくれました。クラスメートに積極的に質問したり、自分の意見を述べることに自信を持てたりしたことが成長を実感する経験として共有されました。

先生方からは、思考コードのC軸、つまり創造性を開いていく授業は、正解・不正解の中に生徒を押し込めないことが、生徒の自己表現を促進する効果につながっているという説明がありました。そのことを証明するかのように、「PBLのPは皆さんにとって何を意味しているでしょうか」という田中先生からの突然の質問に対しても、生徒は「Program」だったり「Problem」だったり、あるいは「Practice」だったりと、それぞれ自分なりの回答と説得力ある理由を述べていました。これには質問を投げかけた田中先生自身も驚いていました。

会場にいた受験生の保護者からは、家庭でどのようなことを意識したらよいかという熱心な質問もありました。「否定ではなく、違う角度からの質問を出して子どもと対話をしていく」といった回答や、「学校イベントに参加し、実際に思考力講座を体験してみてはどうか」といった回答に、頷いている保護者や塾関係者たちの姿が数多く見られました。

最後は、21世紀型教育機構のアクレディテーションチームから、21CEOの加盟校のアクレディテーションスコアの3年間推移などが紹介されました。特に、授業に関連する3つの評価項目について、PBL型授業を推進することは、生徒の高次思考を促進し、ICTの積極活用にもつながるため、全体のスコアを引きあげていることがデータ的にも検証できると、株式会社FlipSilverlining代表の福原将之氏から説明がありました。

さらに、株式会社カンザキメソッド代表神崎史彦氏からは、PBL型授業は、生徒の自己変容型マインドセットを育成するということ、そのことが、知識の出し入れをするだけの授業よりも、結果的に大学入試に関しても非常に有効であるというお話がありました。

総合司会を務めた児浦先生と田中先生は、全体のタイムキーピングをしながら、生徒たちやオーディエンスをうまく盛り上げ、セミナーの参加者の一体感のようなものを創り上げていました。最後には、参加した生徒たちや会場を提供してくださった和洋九段の先生方、そして受験生保護者や教育機関関係者の皆様に感謝の言葉を述べて散会となりました。

 

 

 

 

 

 

2020年2月16日第4回新中学入試セミナー開催

2020年は教育のみならず、政治経済社会も大きく変わる激動の年です。当然中学入試も私立学校の教育も大きく変わります。今回は首都圏模試センターの取締役・教育研究所長北一成氏をお招きし、2020年の中学入試の総括と2021年の見通しを分析していただきます。

お申し込み→定員を満たしました。多くの方にお申し込みいただきありがとうございました。

そのうえで、「新タイプ入試」や「新しい学びの経験」を生み出すPBL型授業の成果を共有します。PBLは、すべての授業でPBL授業を実践する実績を生んできた和洋九段女子のモデルをご紹介します。

そして、それがモデルで終わるのではなく、実際に生徒がナビゲーター役を果たすワークショップ体験もしていただくプログラムになっています。新しい学びの経験は、実際に体験してみないとわからないことが多いのですが、今回、PBLによって生徒自身が創出したSGDsスゴロクワークショップを行います。

和洋九段女子のPBLはProblem based Learningから自らのミッションをもったマイプロジェクトを発見するProject based Learningに発展していきます。その成果が今回のSDGsのスゴロクワークショップです。

SDGsに取り組んでいる企業やNPO団体、国連などとコミュニケーションをとりながら、日々アップデートを続けるこのワークショップ実践を通して、生徒は探究の楽しさから凄みを感じるまでになります。生徒がどう感じどう考えているかは、パネルディスカッションで議論になるでしょう。

また、このような新しい学びの経験の実践の成果の保障をどのように組み立てるのか?欧米ではあたり前に行われているアクレディテーションの手法も公開します。新しい学びの経験の生まれるわけ、その作り方、そして評価の仕方についての動きは、2021年の中学入試の変化とシンクロする動きです。

まだまだ、このことの重要性に気づいていない人も多いでしょう。希望は幸せの青い鳥です。すぐ近くにいるのに気づかないものです。ぜひいっしょに小さな青い鳥をつかみましょう。

プログラム(敬称略)
 
総合司会 児浦良裕(聖学院21教育企画部長)×田中歩(工学院教務主任) 
 
13:00~13:30 中学入試のさらなる動き 基調講演Ⅰ
  「2020年度中学入試の総括から考える2021年度中学入試の動向」
     北一成(首都圏模試センター取締役・教育研究所長)
13:35~13:55 新しい人材育成としての新タイプ入試とPBL 基調講演Ⅱ
  「未来を拓くグローバル教育×PBL」
     中込真(和洋九段女子校長)
14:05~14:35 SDGsスゴロクでPBL体験 生徒によるワークショップ
  「PBLで生まれたSDGsスゴロクワークショップ」
     和洋九段女子の在校生がファシリテーター
14:45~15:30 中学入試が教育を変える パネルディスカッション
   「多様な中学入試とPBLの未来への役割」
     北一成(首都圏模試センター取締役・教育研究所長)
     新井誠司(和洋九段女子教頭)
     児浦良裕(聖学院21教育企画部長)
     田中歩(工学院教務主任)
     和洋九段女子生徒
15:40~16:00 21世紀型教育の成果 トークセッション
     アクレディテーションチーム
     鈴木裕之(GLICC代表)
     福原将之(株式会社FlipSilverlining代表)
     神崎史彦(株式会社カンザキメソッド代表)

 

「21世紀型教育カンファレンス」を実施しました

12月15日(日)に工学院大学新宿キャンパスのアーバンテックホールで「21世紀型教育カンファレンス」を実施しました。環境破壊や格差社会を生み出してきたこれまでの教育から決別し、循環社会にコミットする21世紀型教育の時代が本格的に到来したことを確認するカンファレンスとなりました。  by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家

折しも2021年の大学入試改革が完全に骨抜きになったことで、明治時代から本質的には変わることのできない日本という中央集権国家を私たちは目の当たりにしています。しかし、そこに静かなる信念を持って、来るべき社会への準備教育を行っている「志ある私立学校」があります。その連合こそが21世紀型教育機構(21st CEO)です。

CEFRのC1レベルに到達している生徒の比率や、PBLの授業実施率、生徒の多様性率など、細目で80項目にも渡る規準を設けた評価を外部のチームによって実施し、厳密にスコアを適用することで自らの教育の質を高めてきた学校の思いや成果が明かされました。

PBLやSTEAMなどの重要性についていち早く提唱してきた21st CEOでは、単なる授業テクニックといった次元でこれらの重要性を訴えているわけではありません。グローバルゴールズを達成する地球市民として行動することや、Growth Mindsetを持って常に成長し続けようとする上で必須であることこそが、これらの授業の本質なのです。

今回のカンファレンスで明らかになったことは、21st CEOが2020年から2024年にかけて次なるブレイクスルーを起こすであろうということです。それは教育の質の面で国家というくびきを乗り越えていくことにつながるでしょう。問題を解決するためにはそこに踏み込む必要があることが今回のカンファレンスではっきりしたのです。

第1回21世紀型STEAMフォーラム in 工学院  実りの秋の学びに。

2019年10月27日(日)、工学院で、「第1回21世紀型STEAM教育フォーラム」を実施しました。会場設置からフォーラム運営まで、工学院の教師と生徒の皆さんが知力と機動力を発揮。盛会のうちに幕を閉じました。

9人の在校生(中1・中2)がマイクラのファシリテーターを行うだけではなく、すべてのセッションに参加。さすがは、デジタルネイティブZ世代。テクノロジー、エンジニアリング、デザイン思考、創造力を発揮。未来の学びは、ここにあるということを参加者全員で共有できたと思います。

第Ⅰ部は、まずはSTEAM教育体験。マイクラで「理想的な学食づくり」についてチームで議論し、議論した内容を工学院生が、マイクラで即興的に具体的に学食空間を創り上げていきます。解題の部で、後藤先生は、今回のワークショップはプランニングを精密にやるのではなく、話し合いながらそこで同時に創造物が生まれてくるブリコラージュ発想で行いましたと解説がありました。

MITメディアラボのレズニック教授のクリエイティブラーニングの紹介もあり、MITメディアラボが大事にするプレイフルやハーバード大学が大事にする野生の思考というものを体験したわけです。

第Ⅱ部のワークショップでは、PILアプリの体験。今度は、綿密にプランニングされたアプリを活用することで、実は思いもよらない気づきが生まれるという制約の中で、推理と真理のギャップからクリエイティビティを生み出す教科授業の環境の体験でした。

第Ⅲ部は、パネルディスカッション。第Ⅰ部、第Ⅱ部のベクトルが一見反対の2つのSTEAM教育体験について、気づきを共有する対話です。パネリストには聖学院の児浦先生もかけつけ、工学院生も交えて、進行していきました。

モデレーターの福原氏は、途中、聴衆側という役割をとっぱらうために、スピードデートという対話型のアクティビティを挿入していました。

参加者側からも質問や提案がでるなど、柔らかい共感力あるディスカッションがホールに広がり、幕を閉じました。知の実りのあるフォーラムになりました。みなさま、ありがとうございました。

和洋九段女子が新しい社会を開く(2)

―みなさんにとって、SGDsの取り組みは、学校の教育を超えて、かなり社会に結びついているのですね。すてきですね。ということは、この活動は、中3が終わっても続くわけですよね。東京オリンピック・パラリンピックの話まででているわけですから。
 
「今年の5月にシンガポールの研修に中3全員で行ってきましたが、SDGsの取り組みはそれほど活発ではなかったし、シンガポールの同じ世代の生徒と話しても、知らないという反応でした。何かいっしょに考えていくことはできると思います。」
 
 
 
「シンガポールは急激に経済を発達させたから、米国と同じで環境問題にあえて関心をもたないのかもしれませんが、一方で今まで企業の方と話をしていると、SDGsの問題、特にCO2排出など削減に取り組まないと、経済リスクがあることがわかってきているので、無視はしていないはずです。もっと話し合いが必要です。」
 
「私の場合は、今回国連とネットワークを結ぶことができたので、将来は国連にもっと提案していけるようになりたいですね」
 
 
「私は、スゴロクだけではなく、もっといろいろなゲームを開発していけばよいかなと思っています。」
 
「今回SDGsに関連する取り組みをして感じたのは格差の壁ですね。富裕層は、困っている人たちにもっと目を向け、助ければよいはずなのに、そういう動きは少ないです。私は自らはお金をもうけ、困っている人に還元できるファンドを作ったりしたいと思います。」
 
「私はまた違うアプローチかな。企業とか国連とかそういう大きな団体を動かすことも良いと思いますが、私は小学校の時赤い羽根募金の活動を体験したりして、草の根運動の大切さを実感しています。地域の人が、駅を活用した時に、あっこういう大事なことがあるんだと気づいてもらえるような掲示や呼びかけをしたいと思います。SNSなどの活用もしたいですね」
 
以上のように、SDGsスゴロクプロジェクトメンバーとのインタビューの一部を見てもらいましたが、和洋九段女子のSDGsのプロジェクトの取り組みが、たんにSDGsとは何か知識レベルの調べ学習で終わらずに、企業や国連やユネスコなどの団体と対話レベルで結びついていることが了解できました。
 
 
それだけではなく、さらに多くの人々を巻き込み、SDGsのグローバルゴールズを共に解決していくための大切な問題意識を共有していく社会貢献活動ともいうべき広がりをもっていることも分かりました。2020年東京オリンピック・パラリンピックで社会的インパクトを生みだすエネルギーが蓄積されていることが実感できたのです。
 
さて、和洋九段女子という女子校が、このような本格的なオーセンティックなプロジェクト学習を、学校挙げて行っていることは、歴史的な目で眺めると、相当大きな意味が二つあります。
 
一つ目は、SGDsに取り組む姿勢は、世界共通の根本問題を取り扱うということを意味しています。教科書の世界の知識の領域では、世界共通の根本問題を掘り当て、それをいかに解決していくか思考し、実際に活動につなげていくことはできません。これは同校のすべての授業がPBL型授業で行われているということにも密接な関係があるでしょう。
 
さて、なぜ根本的問題かと言うと、外務省のホームページにはこうあるところからもわかります。
 
「持続可能な開発目標(SDGs)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。」
 
SDGsは、全ての国にとって普遍的な問題だということが明快に表現されています。しかし、歴史的に見ると、この環境問題や格差問題などのグローバル・イシューは、2001年になってはじめて国際的に意識されたわけではありません。
 
1972年にローマクラブが公表した「成長の限界」が端をはっしています。このまま世界の問題を放置しておくと100年で地球は限界に達してしまうという警鐘を鳴らしたのです。そこから、様々な国際環境会議やフォーラムが毎年のように開催されていますが、公表以来、47年がたっています。削減が進んでいるという見方もありますが、昨今の凄惨な事態を引き起こしている自然の猛威やテロの日常化を見ていると、ますます成長の限界は近づいている切迫感を感じないわけにはいきません。
 
 
SDGsへの取り組みは、それゆえ学びの根源的な問題だといってよいでしょう。和洋九段女子はそこに立ち戻って、PBL授業や活動をしているのです。
 
二つ目は、SDGsのキーワード「持続可能な社会」を示す“Sustainable Development”という言葉が生まれたときの重要な意味がここには暗示されています。その意味は女子校だからこそなおさら重要なのです。実は、この“Sustainable Development”という言葉は、1987年に誕生しました。
 
1984年に、「環境と開発に関する世界委員会(WCED)」が設置されました。委員会は、1987年、報告書「我ら共有の未来(Our Common Future)」を発表して、これまでの議論やリサーチのまとめを報告しました。このときのリーダーがノルウェーの首相のグロ・ハーレム・ブルントラントさんです。この報告書は、「ブルントラント・レポート」と呼ばれる程です。グロ・ハーレム・ブルントラント首相は、ノルウェー初の女性リーダーです。オスロ大学卒業後、ハーバード大学でも学んだ医者でもありますが、そのときの世界ネットワークが、ノルウェーのみならず、世界の社会的枠組みを変える大きな影響力を与えるのに一役買っています。とにも、社会的イなパクトを生みだした女性なのです。
 
 
和洋九段女子の女子校教育のモデルが、もしかしたらグロ・ハーレム・ブルントラントさんの生き方と親和性を持っている可能性が高いのではないでしょうか。
 
第一次産業革命以来、化石燃料をつかって技術革新を行い巨大な男性中心社会や組織が造られました。その中で、子供や女性や貧困層は、虐げられてきました。
 
ところが、第二次産業革命、第三次産業革命が成長の限界を生み出してきたことが明らかになり、徐々にその抑圧や格差は問い直されるようになりましたが、依然としてそれは解決されていません。
 
それが、今年9月23日にニューヨークで開催された「国連気候アクション・サミット2019」で、スウェーデンの16歳の少女グレタ・トゥーンベリさんが発した演説が象徴しているように、金融業をはじめとする多くの企業が、国を超えて、CO2排出ゼロにしようとか、AI社会による限界費用ゼロ社会を推し進めようとしています。
 
第4次産業革命は、今までマスクをかけられてきた化石燃料活用の根源的な問題が明らかになっていく時代です。
 
それを明らかにする活動のリーダーシップを発揮するのは、抑圧されてきた側として当事者だった女性によること以外に考えられないでしょう。女子校は、第三次産業革命までの社会を築いてきた男子の目を気にする必要がありません。遠慮する必要はないのです。それがゆえ、自ら今までにない新しい社会や世界を描くことができるでしょう。
 
男子校や共学校の男子は、いったん自分たちが抑圧する側にいることを認識しなおし、その殻や壁を自らぶち破る辛く苦しい心の葛藤を超える必要があります。それは実際にはとても難しいことです。
 
 
社会は常に中心からではなく、周縁から変わるダイナミズムが作動します。それが歴史的力学です。社会の中心にいた男性は、なかなかその居心地の良さから離れるのは難しいでしょう。それは今まで社会が変わらなかった大きな理由の一つだと言われてもいます。
 
男女共学の場合、今では苦しい立場の男性を支える女性という役割がまた働きます。心理学的にはいっしょにいるわけですから、当然の流れです。
 
もちろん、果敢にこの葛藤を乗り越えようとしている男子校や共学校もありますが、まだまだ少ないわけです。したがって、女子教育は、そこを一気呵成に発展させていくことがでます。あらゆる授業でPBLを展開して探究の構えを準備し、SDGsにこれだけ本格的にかつ真剣に取り組んでいる女子校である和洋九段女子に期待がかかるのはそういう理由があるのです。
 

和洋九段女子が新しい社会を開く(1)

和洋九段女子は、SDGsについて教育活動として本格的に取り組んで3年目を迎えます。中1では、まずSDGsについて、関連情報を徹底的に調べていきます。中2では、SDGsが実際に企業やユネスコなどの団体でどのように扱われ広められているのか、企業活動を取材するフィールドワークやインタビューのリサーチをしていきます。
 
中3では、それでは、自分たちは何ができるのか、実践的なプロジェクトを立ち上げて実行していきます。今年の中3は、SDGsスゴロクプロジェクトを立ち上げ、ゲームを通してグローバルゴールズを達成するにはどうしたらよいか考えるワークショップを開発しました。ファシリテーターの役割を、中3の生徒が自ら果たしていきます。
 
 
 
この連綿と続くSDGsへの取り組みは、文化祭以外でもプレゼンする機会がありますから、学内でも広がります。したがって、高校生が過疎化で苦しんでいる農村に訪問し、ホームステイしながら地域の人びとと問題を共有し、解決する時にSDGsへの貢献を自分たちもしていることに気づくということにつながったりしています。
 
この和洋九段女子の生徒によるオーセンティックなSDGsの取り組みは、徐々に企業やユネスコ、国連広報センター、学びの連携をしている自治体で評判になっています。実際、SDGsスゴロクプロジェクトのメンバーにインタビューしてみると、社会的インパクトを与える手前まで来ていることを実感しました。
 
 
―このプロジェクトをたちあげた理由はなんだったのですか?
 
「夏休みに何かやろうという話になって、メンバーが集まって話し合っているうちに決まりました。はじめからこれをやるという決められたものはありませんでした。」
 
「それに私たちは、企業の方々と話しているうちに、ただインタビューだけで終わるということはなく、いろいろな情報も得ました。外部でSDGsの浸透をカードゲームのワークショップを通して広げていこうという研修会があることを知ることもできました。時間の都合がつけば、実際に参加したりもしました。」
 
「和洋九段の先生方も、そのようなワークショップに参加して、情報を提供してくれることもありました。」
 
「そのようないろいろな体験があったし、やはりやるなら参加した方々も楽しみながら理解を深めていける企画がいいなあということになり、同じようなワークショップを参考に、自分たちのオリジナルのゲームを作ろうということになったのだと思います」
 
 
―このスゴロクを編集制作していくときに、創意工夫というかなかなか大変だったということは何かありますか?
 
「それは、やはりマス目の選択と並べ方ですね。」
 
「マス目には、SDGsの17のゴールのカードがもらえたり、このスゴロク上のおカネを獲得したり手放したりする理由が書かれていますが、その内容を中3全員から集めて、整理するのは意外と難しかったですね。」
 
「それに、あるマス目には、クイズも入れましたから、それもみんなに作ってもらいました。この間国連でグレタさんがスピーチしていて驚きましたが、私たちのクイズにもグレタさんに関連するものがあって、ちょっと嬉しくなりました。」
 
 
「そして、何より順番を決めることですね。最終的にあがったときに、手持ちに集まるカードやお金によって、参加者自身があらかじめ設定した国の多くの問題がどう変化しているか話してもらうわけですが、その話ができるような結果になるかは、何度も順番を組み替えました。」
 
「国連広報センターのスタッフの方も、今のスゴロクになる前の、私たちはプロトタイプと呼んでいますが、それをみてもらって、いろいろアドバイスを頂きました。子供も参加できるように表現を工夫することなど指摘していただきましたが、やはり、順番はこうしたほうがよいのではというアドバイスは自分たちでは気づかないことが多く、勉強になりました。」
 
「そのプロトタイプをだいぶ変えて、今に至っていますが、たぶんこれからも実際にワークショップをやりながら変更していくことになると思います。ファシリテーターを自分たちでやっているので、参加者の反応が伝わってきます。やはり反応がよいときは嬉しいので、そうなる並び方や、マス目の内容を変えていきたいと思います。」
 
―文化祭で、みなさんがワークショップのファシリテーターを行っているのを拝見しましたが、このワークショップはもっといろいろな場所でもできるのではないでしょうか?そんな企画はありますか?
 
「学校説明会のときに行われる体験授業などで行うこともできます。受験生がSDGsについて理解を深めたり問題を私たちと共有することは大切です。」
 
「来年2020年東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。取材をさせていただいて今もお付き合いのある企業や団体に、海外から来た人といっしょにできる機会をつくるのはどうかちょっと提案もしてみたいと思います」
 
「それに、ワークショップを行うことも重要ですが、私たちは今回の取り組みで、身近なところがSDGsにつながっていることに気づきました。その気づきを共有していくことはとても大切です」
 
「たしかにそうですね。私の場合は家族とよくSDGsの話をするようにしています。意外と知らないのにはじめ驚きましたが、考えてみたら、まだ認知度は30%達していないと言われていますから、当然です。母が、この間知り合いと話したら、相手の方は知らなかったわというような話題にもなります。」

 

聖徳学園―SDGsに貢献するPBL

聖徳学園の「国際協力プロジェクト」は、高校2年生全員が1年間かけて開発途上国への支援を実行する活動です。各クラスで5人ほどのチームを編成し、JICA職員や開発コンサルタントなど様々な専門家の意見を仰ぎながら、担当した国への支援活動を実際に行うというPBL(Project Based Learning)で、毎年継続して取り組んでいます。

SDGsの好事例集として文部科学省のホームページにも掲載されている「国際協力プロジェクト」は、持続可能な開発目標として17のゴールが採択された2015年の国連サミットより前から取り組んできたものです。ですから、SDGsの目標から逆算的にアプローチするというよりも、個々の国や地域の問題にフォーカスし、そこから実行可能な問題解決を具体的に考えるという方法を取ってきました。結果としてそれが水や衛生、健康、貧困、といった解決すべき目標に向かう活動につながっているのです。

また、聖徳学園の「国際協力プロジェクト」はPBLのプログラムに落とし込んでいるという点で「持続可能な開発のための教育=Education for Sustainable Development(ESD)」の中でもひときわユニークな活動になっていると言えます。

それは、実際に現地の人々のために役立つという「成果」を重視しているところに特に顕著に表れています。実行可能なプランであることが大前提なのです。

私が訪問した10月3日には、ルワンダとモザンビークをそれぞれ担当しているクラスの生徒たちが中間報告をしたのですが、水質を良くするろ過装置の作成方法や、マラリアなど蚊が媒介する伝染病を防ぐための蚊帳を作成する方法をSNSで配信するなどといったプランが発表されていました。

限られた予算で支援活動を継続していくためには、コストを削るだけでなく、募金活動などで一般の人々に呼び掛けていくことも時に必要です。中にはクラウドファンディングなどを計画したグループもあったということです。もちろん資金調達への壁はそれなりに厚いものがあり、そういう社会の現実も知っていきます。

しかし、そのようなオーセンティックな課題に取り組んでいるところにPBLの学びの本質があります。当然評価も、プレゼンテーションや最終成果だけではなく、対話のプロセスを積み重ねたものになります。中間報告会はそのような形成的評価の一つとして、積極的に外部の人間からのフィードバックを活用する機会となっているのでしょう。

このように学外の専門家とのネットワークを活用している点も聖徳学園の「国際協力プロジェクト」の特色です。

モザンビークにせよ、ルワンダにせよ、ふだんニュースで報道されることがほとんどない国の状況を知るためには、現地に行ったことのある青年海外協力隊への取材が必須です。こういった隊員の体験談とインターネットなどによる基本情報を組み合わせて、生徒たちは現地の状況を想像し、その状況に合わせた支援策を考えるのです。なかには、ルワンダのリサーチをきっかけに興味をもってルワンダへの研修旅行に自主的に参加する生徒もいたということですから、いかにこのプロジェクトが生徒たちの「アクション」を引き出しているかが分かろうというものです。

こういうPBLのプログラムを育てるためには、将来を見通すビジョンや、信念を持って息の長い活動を続けようとする先生方の意志が必要です。なにしろPBLのプログラムというのはそう易々とは作り上げられるものではないからです。

聖徳学園では、人的リソ-スや経験そしてPBLの価値を重視する環境があるからこそ、「国際協力プロジェクト」が継続的に行われているのです。

第1回21世紀型STEAM教育フォーラム in 工学院

10月27日(日)、工学院大学附属中学校高等学校で、「第1回21世紀型STEAM教育フォーラム」を開催します。

多くの方にお申し込みをいただきました。心から感謝申し上げます。

 

【趣旨】 
「2040年問題」を解決する<新しい学習経験>の1つはSTEAM教育です。「2040年問題」とは、もし今のままの教育が行われ続けば、たとえば、今の中学1年生が34歳になる2040年の社会は壮絶なものになっているということです。
 18歳人口は88万人に減少すると予想されています。生産年齢人口は半減すると予想されています。もしも教育が変わらなければ、学校環境や政治経済社会の環境がひどい状況になっていることは火を見るよりも明らかです。あの16歳のグレタ・トゥンベリさんは、よくもそんなことができますね。私たちは決して許しませんと語るでしょう。
 そこで、21世紀型教育機構は、この「2040年問題」をそのようなデストピアシナリオからユートピアシナリオに書き換えようという挑戦をしています。
 「C1英語を目指す・PBLをすべての授業で・ICT1人1台活用・STEAMと哲学によってリベラルアーツを現代化・思考コードなどのメタルーブリックの開発実践・海外大学進学準備教育の実施・思考力入試の実施・英語入試の実施」に取り組んでいます。これによって、すべての中高生1人ひとりが自分の才能を発見し開発し、私たちといっしょに世界を変えるグローバルシチズンとして成長して欲しいと願っています。それが「2040年問題」をユートピアシナリオに書き換えることです。
 今回は、そのような<新しい学習経験>のうちSTEAM教育の取り組みについてみなさんとワークショップをします。21世紀型教育機構では、2つのSTEAM教育という考え方を実施しています。それはいったいどういう考え方なのか、いっしょに体験してみませんか。
 
プログラム(敬称略) 総合司会 福原将之(21世紀型教育機構サポートメンバー)
 
第Ⅰ部 M型STEAM教育体験ワークショップ<世界を変える創造的才能が生まれる>
13:00~13:15「2つのSTEAM教育の必要性」
      田中歩  工学院 教務主任・21世紀型教育研究センターリーダー
      後藤隆宏 工学院 国語科教諭・21STEAM教育リーダー
13:20~14:20「M型STEAM」ワーックショップ
      ファシリテーター 後藤隆宏×工学院生徒
14:20~14:30「M型STEAM」解題 講師:後藤隆宏      
 
第Ⅱ部 C型STEAM教育体験ワークショップ<教科授業で創造的才能が生まれるきっかけ>
14:40~15:10 「C型STEAM」ワークショップ」
      ファシリテーター チームフクハラ
       福原将之 株式会社FlipSilverlining 代表取締役 
 
第Ⅲ部 ディスカッション <教科授業と教育活動を有機的に結びつける>
15:20~16:00  「多様なSTEAM教育と考え方」
      児浦良裕 聖学院 21教育企画部長・国際部長・広報部長

 

      田中歩・後藤隆宏・工学院生徒 モデレーター福原将之 

 

富士見丘 魅力的なグローバル教育(了)

イギリス風パロディー模擬店“Miss Donut”で笑顔でおもてなしをしていた富士見丘生の中には、午後から大きな豹変ぶりを見せた生徒もいたのです。その人数はかなり多く、マルチロールプレイができる少人数学校の効果的な教育の一側面を垣間見ることができました。

それは、模擬国連部の活動でした。模擬国連での提案、交渉、リーダーシップの一連のやりとりは、数日かかるタフな活動です。富士見丘の模擬国連部は、学内でも大人気の部活で、様々な賞を取るなど実績も積み上げています。

文化祭では、20分間で、その模擬国連での部員の活動をシミュレーションして披露したのです。かけつけた参加者は予定以上になり、補助いすを生徒がせっせと追加したほどです。

テーマは「移民政策について」で、各国の大使になった部員は、それぞれの国の事情を調べ、外交的に有利なそれでいて世界の秩序を形成できる提案を立案して発表します。たんに英語ができるだけでは、これはできません。世界地理や歴史、世界の政治経済の状況をきちんと調べ、その国固有の問題や地政学的リスクも調べていきます。政策にはエンジニアリングやテクノロジー的なイノベーションの知識も必要です。

プレゼンテーションは雄弁でなければならないし、交渉はタフネスがものをいいます。そして、何と言ってもグローバルリーダーシップです。

部員は全員1人1台のタブレット型ラップトップを持って、調べたり、編集したり、コミュニケーションをとったり、発信したりもします。議論すべき内容も当然ながらSGDsに強く関連するテーマばかりです。今や富士見丘の模擬国連での活動は、ある意味STEAM教育といっても過言ではないでしょう。

もちろん、オールイングリッシュで準備から本番、振り返りまで展開します。二人の外国人講師と一人の英語科教諭田中先生が強力なサポートしていますが、長年イギリスや米国で研究し、法学のPh.D.(博士)まで取得している理事長補佐・校長補佐の吉田成利先生(明海大准教授)が全面的にバックアップしているのは、他校にない最高の環境です。

日本は、先進諸国の中で女性の社会進出が最も遅れている国です。今後富士見丘生が今の社会で活躍するだけではなく、新しい世界秩序を創出するグローバルリーダーとしても活躍することになるでしょう。21世紀が女性に求める期待を富士見丘は体現しつつあるということなのです。

富士見丘 魅力的なグローバル教育(2)

富士見丘のグローバル教育のベースはどちらかというとイギリスです。もちろん、スタンフォードやシカゴ大学の米国の発想の影響もありますが、やはりイギリス経験主義、啓蒙主義、功利主義、カルチュラルスタディーズ、分析哲学、メタ倫理学などの伝統的というか真正なアカデミズムの流れがあります。それぞれ違いますが、なんといても「クリティカルシンキング」の保守本流はイギリスのアカデミズムです。

文化祭の模擬店ひとつとっても、上記のような写真にあるように、ユーモアあるクリティカルシンキングが発動しています。イギリス的パロディーが生き生きしています。SGH認定校として、全校でSGDsに取り組んでいることもあり、上記の写真の模擬店がジェンダー問題を風刺しているのはすぐにわかりました。

また、模擬店内は、宮崎アニメの世界が広がっていました。これも、格差社会への危機意識や自然破壊による大切なものの喪失感について問題意識のある宮崎駿ワールドを、自分たちが日ごろ追究しているSGDsの問題に重ねたのでしょう。

彼女たちの笑顔の背景には、そのようなこれまでの男性中心社会が破壊してきた自然と社会と精神の循環型社会創出への強い意志があったのです。

その強い意志は、今回の文化祭のペットボトルゲートに象徴的に表現されていました。文化祭全体の一貫したアートプロデュースもSGH校の活動の一環だったのです。

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