PBL

2020年度21CEO第1回オンライン定例会「学びの未来へ」(5)

21世紀型教育機構は、グローバル教育3.0を確実に実現するために、細かな項目によって外部評価を受ける仕組みを取り入れてきました。

例えば「高校卒業時に英語力がCEFRのC1レベルに達している生徒が全体の30%に達しているかどうか、B2レベルの生徒はどうか」などといった細かな項目によって、毎年アクレディテーションを行い、認定証を発行しています。福原将之氏と神崎史彦氏にアクレディテーションを委託しているのは、お二方とも会社経営者として独立しており、それぞれICTやPBLといった面における専門性を発揮しつつ、学校の成長を定点観測できる立場にいるからです。

また、教育関連の著書を出版し、講演会でも活躍されている理事の石川一郎先生にもアクレディテーションにおける考え方の後方支援をお願いしています。思考コードやブルームタキソノミーによる思考の次元の分類などを様々な場で広めていただいています。

石川先生からは、21CEOでキーワードとしていた「創造的破壊」が本当に到来したという見方が示されました。これまで自明だった世界がある意味で破壊されたのが、今回の危機であるが、それはしかし、次の世界を創り出す機会でもあるのだというビジョンに基づくものです。

時代は変わっていきます。かつて英語到達目標をCEFRのC1と掲げた時、機構の外部にいる教育関係者の中には現実離れしているという冷ややかな態度をとった人もいましたが、「世界の学校」に仲間入りするにはどうしても必要な目標基準の一つです。日本の大学に進学するのでも世界と対話できる力を身につけることが必須のスキルだという考え方からすれば、C1レベルを目標にすることは論理的必然であるわけです。

現在の加盟校はすべてクオリティ21世紀型教育校以上のスコアをクリアしている学校で、さらにそれぞれの目標を掲げて邁進しています。

今回の新型肺炎による休校は、オンライン学習への対応力が問われるものとなりましたが、すでにタブレットやラップトップが生徒全員に行き渡るように準備していた21世紀型教育機構の学校にとっては、その対応は至極スムーズに行われることになったわけです。

その対応の早さについては、首都圏の私立中高を中心に150校ほどのアンケート調査を行った首都圏模試センターの山下氏や北氏からもお墨付きをいただくほどでした。アンケートの結果からは、公立に比べて私立のオンライン導入が進んでいた結果は明らかだったということですが、中でも21世紀型教育機構加盟校の動きの早さは群を抜いており、保護者にもっとアピールできる点でもあるというアドバイスをいただきました。

21世紀型教育機構の基準からすればオンライン対応は当たり前です。Web 3.0=グローバルイマージョンとは、世界と日常的につながっていることを意味しています。

 

定例会の最後を締めくくる言葉は、聖パウロ学園理事長の高橋博先生にお願いしました。高橋先生は、在校生はもちろん、新入生保護者から「私学に入れて良かった」という声がもらえたことがとても印象に残っているとお話され、こういう声を忘れないようにケアをしていただきたいという激励と、長い定例会の参加をねぎらう言葉を頂戴して、2時間半を超えるオンライン定例会はお開きとなりました。

 

今やオンラインはリアルの代替なのではなく、もう一つのリアルです。ICTの進化は、学びの新たな地平を創り出す方向に加速していくことでしょう。本当の21世紀型教育というのはここから始まっていくのだと強く感じた定例会でした。

 

2020年度21CEO第1回オンライン定例会「学びの未来へ」(4)

21世紀型教育機構加盟校は、毎年外部の厳密なアクレディテーション調査を行い、総合スコアに基づいて21世紀型教育校として認定されている学校です。授業スタイルや生徒の思考次元はもちろん、ICTの活用についても調査項目に含まれています。分科会の後のパートでは、今回の長期休校において21世紀型教育の強みがどのように発揮されたのかについて各加盟校から報告がありました。

聖学院 児浦先生より

「PBLとオンラインを考える分科会では、生徒との対話を活性化する問いの方法論、そして教師がその生徒の内的な成長をどのように評価すればよいかといった議論があり、興味深かった。実際に聖学院では、オンライン授業やオンライン課外活動のさらに先に、生徒が自分たちで議論を深化していくシェアリングサイトが設置され、盛り上がっている。教師が生徒を牽引していく時代が終わり、教師と先生の新しい関係、一緒に走っていく時代になったことを強く実感している。また、オンライン学校説明会には100名を超える参加申し込みがあり驚いている。」

 

順天 長塚先生より

「これまではSNSをどちらかと言えば危ないものとして見ていたが、そういったものを教員の側も積極的に活用する大転換が起こっていると認識している。教員の意識を変えることや、デバイスやWifiなどの環境を調査するなどの準備をこれまではしてきたが、いよいよ実際に進めていく時期が到来した。動画を使ったオンデマンド型と双方向型の組み合わせで進めていく。」

 

 

工学院 平方先生より

「WEB3.0を前提にこれまで進めてきたので、全員がPC/タブレットを持っている、また、家庭にほぼ100%Wifi環境が整っていることも分かり、教員もテレワークで会議などを積極的に行っている。Zoom、Edmode、Teamsなどのツールを活用しながら、面談も実施し、ラウンドスクエアなど海外校との交流も始めている。すでに学年主任からの報告を受け、これまではほぼ問題ないことが確認されている。今後はオンラインであっても双方向のPBLを実践していくことが必要で、毎日の会議で議論している。」

 

和洋九段 中込先生より

「朝の出欠確認から始まり、3時間の授業をZoomで行っている。授業だけではなく担任による面談も効果的である。生徒の家庭のWifi環境が98%に達していたのは幸運であった。平日の夜は、教員がミーティングを開いて準備を重ね、4月13日からオンラインでの授業を実施している。連休明けから1学期中はすべてオンラインで授業になることを想定して準備をしている。興味深いのは、授業とは何だろうという問いかけを教員自身が始めていることで、教員の意識に変化が起こっている。」

 

 

三田国際 原田先生より

「4月に教員研修を開き、オンライン授業を組織的に検討できた。『TeachからLearnへ』という学習者中心の学びの変化を加速するものとしてオンライン授業を捉えている。4月は導入時期と位置づけ、1日3コマの授業で課題について調べたことを発表するという形で進めている。特徴的だったのは、この期間の対応において教員が発言の機会を増やし、風通しのよい組織が再構築されてきたことで、働き方の変化も含め、教員側の意識も変わってきている。」

 

 

文化学園大学杉並 窪田先生より

「4月15日から1日4時間のオンライン授業を実践している。グローバルの分科会でも話題になったが、ダブルディプロマの提携先であるカナダの学校ではオンラインでの授業が当たり前になっており、単位認定のための要件を満たすためのリクエストが次々と届いてくる。その対応に追われながらも着々と学校全体のオンライン対応を進めている。」

 

 

 

静岡聖光学院 星野先生より

「具体的な対応については、ICTチームリーダーからご報告するが、マネジメントの立場としては、思考コードの『C軸』=創造的思考が大切になっていることを感じる。政治・行政の対応を見るにつけ、過去の事象から確率的に高いものを選ぶEBPM(Evidence Based Policy Making) の手法では対応できないことが明らかである。我々としては、未来に向けて走りながら、想像力を掻き立てクリエイトしていくという覚悟で進めている。幸運にも教員のマインドセットができているため、素早い対応が可能になっているが、まだまだ学んでいくべきことも多い。」

 

静岡聖光学院 田代先生より

「2月終わりからオンラインを試験的に進めており、3月2日からオンライン授業を開始した。Zoomを使って6時間、時間割通りに進めている。体育・音楽・美術といった科目についてもオンラインで実施している。体育の教員からは、毎日筋トレが続いていて筋肉痛の報告があがっているほどだが、教員が前向きに取り組んでいることは感謝している。海外の提携校とのオンライン交流の連絡も取り合っていて、アフターコロナにおいても、リアルとオンラインのハイブリッドなあり方を模索していく。」

 

聖ドミニコ学園 千葉先生より

「すでに中学と高校ではTeamsを朝礼に使い、オンラインでの実施をしている。オンライン授業については現在どのツールを使ってどのような形にするのか、議論しながら進めている最中で、様々な選択肢を比較検討しながら望ましいあり方を検討している。」
 
 
 
 
 
 
 
富士見丘 白鶯先生より
 
「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業という、SGHの後継にあたるネットワークの拠点校の指定を受けて、準備を着々と進めてきた。このような状況下で先が見えず、進むに進められない面もあるが、コンソーシアムは確かに存在しているので、ぜひこのような場を借りて他校の協力などを仰ぐことができればと考えている。」
 
 
 
 
 
八雲学園 菅原先生より
 
 
「生徒や保護者に一番しなくてはらないことは、安心感の創造だと思う。単にイベントの日程を組み替えていくということだけではとても安心感を提供することにはならない。このような時だからできるというプログラムを作っていかなければならないし、その際、ツールに操られるのではなく教育の本心を見据えて内容を研究していく必要がある。保護者からの様々な声を聞きながら八雲学園として何を軸にしていくのかをはっきりと示し、安心感を提供していきたい。」
 
 
 
 
聖パウロ学園 本間先生より
 
「ZoomとG-Suitesとグーグルクラスルームを使って、オンライン授業と面談を行っている。カトリック学校なので、ダイアローグを重視し、コンパッション・キュリオシティ・クリエイティビティという3つのダイアログの体系を考え、質を高めている。思考コードも認知面だけでなく、感情・情意面を埋め込んでいる。技術的なことやマーケット的なことよりも、アフターコロナにおいてはクオリティと先生方のパワーが大事になる。生徒の力を開花させることを念頭に、『対話力につきる』という感覚で先生方は邁進している。」
 
 
 
 
 

2020年度21CEO第1回オンライン定例会「学びの未来へ」(3)

2020年の21世紀型教育機構の合言葉は「世界の学校へ」です。脱”偏差値”・脱”横並び”を目指し、オンライン定例会の第3部は、Zoomのブレイクアウトセッションを活用した分科会で各加盟校の活発な議論が行われました。

今回のオンライン定例会で気づかされたことの一つに、オンラインだとフラットなコミュニケーションが活性化するということがあります。画面上では席次のようなものはありませんし、演者と聴取者の役割チェンジが容易(双方向)だということです。それを促進するのがブレイクアウトセッションです。分科会では、5~6名ほどのグループでのディスカッションとなるため、より深い議論になっていくのが参加した先生方の反応からよく分かりました。

A) 分科会「21世紀型学校マネジメント」座長:首都圏模試センター 代表取締役  山下 一 氏 
 今回の未曾有の事態を受けて、学校をどのように舵取りするのかというテーマで、各加盟校の校長先生を中心に議論がなされました。
 
B) 分科会「21世紀型学校広報のあり方」座長:首都圏模試センター取締役 教育研究所長 北 一成 氏
 すでにいくつかの学校で取り組みが行われているオンライン学校説明会などの在り方、さらに来年度の生徒募集全般についての話がありました。
 
C) 分科会「グローバル教育・英語教育とオンライン」 座長:21世紀型教育機構理事 石川一郎 先生
 海外校との交流や、グローバル関連イベントをオンラインで実施し、文化の多様性に触れ、英語力を活用していく可能性を探りました。
 
D) 分科会「PBL・思考コードとオンライン」座長: 聖学院 児浦良裕 先生
 PBLと哲学授業における問いの構造を可視化し、思考コードと結びつけながらオンラインで共有する手順について対話を深めました。
 
E) 分科会「STEAMとICTツールの可能性」座長:和洋九段 新井誠司 先生
 STEAM教育の中身について検証しながら、ICTをどのように活用することが必要か、アイディアを出しあいました。
 
F) 分科会「オンラインセミナー・アクレディテーションの可能性」
  座長:アクレディテーションチーム  福原将之 氏/神崎史彦 氏
 今後のイベントをオンライン化する可能性、またアクレディテーションを有効活用するための知恵が共有されました。
 

 

司会進行役がブレイクアウトセッションの操作に手間取っている際に、様々な先生が知恵を提供してくれるなど、オンライン上で共有する知恵のスピードに改めて感じさせられました。ブレイクアウトセッション以外にも、今回の定例会ではオンラインならではの機能の活用がありました。

先生方のプレゼンテーションで使われるパワーポイント資料は画面共有されるので、一つのPCで編集するという作業が不要になりました。また、英語によるプレゼンテーションでは、チャットを利用した同時通訳の配信にも今回初チャレンジしました(担当してくださった静岡聖光学院の中村先生、ありがとうございました)。

分科会の議論が盛り上がったことは、21CEOの新しい展開を象徴することだと考えています。つまり、フラットな対話と議論がこれからの会議・授業の方向性を示しているということです。21CEO加盟校が「世界の学校」へ進化する契機になったのではないかと考えています。

2020年度21CEO第1回オンライン定例会「学びの未来へ」(2)

基調講演に続いてのパートでは、3人のゲストから新規プロジェクトの提案がありました。 イギリスから参加してくれたのがAlex Dutson先生です。

  

Dutson先生は、『Thinking Experiments』の著者で、英語哲学授業の第一人者です。今回21世紀型教育機構のオンライン定例会に参加してもらったのは、本機構が推進してきた「C1英語」、「PBL」、「ICT」の3つの柱を貫くコンセプトとして「哲学」がこれからの機構の柱の一つになっていくからです。

これまで21世紀型教育機構は、アクレディテーションを通して加盟校のICT活用を促進してきました。今回の状況下で21世紀型教育機構の学校がいち早くオンライン学習に対応できたのは、生徒全員がタブレット端末やPCを持っていて、先生方がそれを有効活用できる準備ができていたからに他なりません。現状では、21世紀型教育機構の加盟校は、ICTやオンライン学習での優位性を保っていると言えるでしょう。しかし、技術の進歩には目を瞠るものがあります。ツール使用における優位性はいずれ近いうちにどこの学校でも行う「普通のこと」になっていくことでしょう。

では、ICTツールによって私たちが目的とするべきことは何か。それは予測不能の未来に指針を見出すことを可能にする「問う力」であり、他人と協働しながら知恵を生み出す「対話力」に他なりません。哲学授業はそのような力を育てます。Dutson先生が持っている英語哲学授業のノウハウは、英語思考力を駆使する帰国生だけでなく、創造的思考力を伸ばしたいすべての生徒、また、PBLを実践する先生方にも「問い」の仕掛けという観点から大きな示唆を与えてくれるものとなるはずです。

LAから参加してくれた久保山皓平氏は、UCLAの大学院に在学中のエンジニアです。久保山氏は、東大工学部時代の友人とエンジニアチームを作り、動画のユニークな検索システムを構築しています。これから次世代通信システムの5Gが普及すると、動画やオンラインによる授業の需要はますます増してきます。そのときに、21CEOが推進してきた思考コードや授業アクティビティに応じた動画データベースは先生方の大きな助けとなるというご提案をしていただきました。

Erin Batty先生は、21世紀型学習コミュニティ「GLICC(グリック)」のアドミニストレーターであり、海外大学進学・英語指導の先生でもあります。Batty先生からは、久保山先生のデータベースの基礎となるようなリサーチを行い、加盟校の先生方に情報提供していくという提案をいただきました。すでにインターネットの中にある学習コンテンツをカテゴリー分類し、21CEOのフォーラムに情報を蓄積していくという内容です。

三人のゲストからのご提案があった後、6つの分科会に分かれ、それぞれのテーマについて各校の先生方による議論・対話が行われました。

2020年度21CEO第1回オンライン定例会「学びの未来へ」(1)

4月23日(木)21世紀型教育機構の定例会がオンラインで行われました。新型ウィルス感染拡大による休校がいつまで続くのか先が見えない中、50名近い先生方に参加していただき、いち早くオンライン学習などを行っている加盟校それぞれの対応について共有しました。

今回の定例会ではオンラインであることのアドバンテージを活かして、ロンドンとロスアンゼルスからそれぞれゲストが登場、新規企画についての提案をいただきました。ポストコロナ時代における学びの可能性について大いなるヒントが得られました。

また、Zoomのブレイクアウトセッションを活用した6つの分科会においては、それぞれの学校の対応を先生方が持ち寄り、次のステージへ向かおうとする先生方の熱意が感じられました。21世紀型教育機構の学校が、危機においても柔軟に対応できる世界水準の学校であることを改めて確認する機会となりました。

予定していた時間を越えて約2時間30分にわたる会議となりましたが、自宅からの参加や服装についても原則自由でよいこととし、各自の健康を配慮した定例会となりました。

「2020年代の私学サバイバル宣言」 富士見丘学園理事長 吉田晋 先生

富士見丘学園の吉田先生からは、このような状況下であっても中等教育に求められていることを見据え、生徒に社会性を身につけさせることや、思考力・判断力・表現力を磨くことの重要性について確認がありました。また、オンライン学習において各学校間の対応に格差が生じていること、特に公立の学校の対応の遅れについて教育行政に求めていくべきこと、また私学が自ら切り開いていくべき道について力強いメッセージが発信されました。

「世界的危機におけるグローバル教育」 八雲学園  近藤隆平 先生

本来は今回の定例会の会場校のはずであった八雲学園の近藤先生からは、留学プログラムについては実際に海外に行かなくてもICTを活用することでオンライン交流・授業によってグローバルな環境を整備することは可能であること、危機的状況が終わった時に、体験型グローバル教育をすぐに再開できるような準備に対する連携が必要であるとお話されました。

「グローバルSTEAMの真価」 工学院大学附属中高校長 平方邦行 先生

工学院の平方先生は、国連本部のあるニューヨークの写真、そしてSDGsの17の目標が掲げられたスライドを共有しながらお話を始めました。ニューヨークは今回の感染拡大で最も苦しんでいる都市の一つです。世界の痛みに目を向けながら、STEAMやPBLを通して21世紀型教育機構の各加盟校がどういう教育を目指すべきなのか、これまで21CEOが推進してきたグローバル3.0の重要性を改めて指摘されました。

「21世紀型教育機構の今後の役割」順天 学校長 長塚篤夫 先生

順天の長塚先生は、ICTが個別化にも役立つ一方で、つながり=連携のためのツールとしての可能性が広がっていることを指摘されました。英語にも言えることですが、ともするとツールの話に終始してしまい、何のためのツールなのかが忘れられがちなので、その「フィロソフィー」を忘れないようにすることが重要であるとお話されました。オンライン学習では、ルーブリックなどによる教育効果の測定がしやすいという特性を活かし、発展途上である「双方向型オンライン学習コンテンツ」の充実を急ぐべきであると強調されました。

第4回「新中学入試セミナー」in 和洋九段ー自己変容型マインドセットが育つPBL

2月16日(日)和洋九段女子「フューチャールーム」で、21世紀型教育機構(21st CEO)主催の「新中学入試セミナー」が開催されました。 

by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家

セミナーの幕開けは、首都圏模試センター取締役教育研究所所長の北一成氏による最新の中学入試情報です。千葉・埼玉・茨城・東京・神奈川の私立・国公立中高一貫の動向を広く分析、首都圏の中学受験生の数が6年連続で増加していること、なかでも思考力入試やプログラミング入試、PBL入試といった「新タイプ入試」を実施している学校が増加している背景について講演していただきました。6年先、あるいは10年先の社会の変化を見越した保護者が、偏差値に依存しない学校選択をしている傾向を伺い知ることができました。

和洋九段女子中学校・高等学校校長の中込先生からは、和洋九段のPBL授業についての説明をいただきました。和洋九段では、全科目全教員が同じ構造のPBLを実践しているということです。その徹底ぶりがあるからこそ、「PBL入試」と銘打った入試が実施されることになったわけです。

「トリガークエスチョン」→「個人ブレスト」→「グループブレスト」→「プレゼンテーション」→「共有」という全教科共通構造のPBLを通して、生徒は自分を表現することに目覚めていきます。その変容を生徒自らが創り上げているところにPBLの神髄があると中込校長先生は語ります。

休憩後、オーディエンスの保護者や教育機関関係者は、2つの会場に分かれて和洋九段中学の中学3年生たちがナビゲーター役を務めるPBL型のワークショップに参加しました。

最初はとまどっていた「大人たち」も、生徒たちの指示にしたがって「SDGsすごろく」をしていくうちに、すっかりSDGsの目指す世界に入り込み、「森林火災で〇番のカードを失う」とか「環境保全に協力してコインをゲット」などといったマス目に書かれた文言に一喜一憂します。

人生ゲームが個人の成功を目指しているゲームだとすれば、「SDGsすごろく」は地球全体の幸福を目指しているゲームです。そのような大きな問題を扱っていながら、和洋九段の生徒は押し付けがましい態度がまったくなく、それでいて大人たちをしっかりファシリテートしている様子が素敵でした。

PBLは「教える⇔教えられる」という関係から「気づき合い」の関係へと参加者を変容させるのです。「持続可能な開発目標」が子どもたちにとってより切実であることは、21世紀を生きる彼らにとっては当然のことです。ゲーム終了後に参加者から「17のゴールのうちどのゴールに最も関心があるか」という質問があった際には、それぞれの生徒がしっかりと自分の意見を述べていて、その姿は頼もしくさえ感じられました。

続いて行われたのは、PBLを実践している学校の先生と生徒たちとのパネルディスカッション。新タイプ入試とPBL型の授業の関係や、生徒の未来にどうつながっているかというトークセッションです。

和洋九段教頭の新井誠司先生からは、この2月に実施されたPBL入試の動画の紹介がありました。受験生同士あるいは受験生と在校生が入試というイベントで交流できることが、「日本で一番入試らしくない入試」というキャッチフレーズ通り、楽しい雰囲気につながっているということです。そして、そういった楽しい雰囲気の中で「共創」することの意義をお話されます。論理性や創造性に加えて、他者を受容するコミュニケーション力などが重視されて選考が行われているといった解説がありました。

聖学院21教育企画部長の児浦良裕先生と工学院教務主任の田中歩先生からは、思考力入試で問われている力と入学してくる生徒についての紹介がありました。

児浦先生は、レゴを使った表現が生徒の潜在力を引き出すことを、実際の生徒の作文を使いながら説明します。思考力入試で合格してくる生徒は2科4科という評価尺度では必ずしも良い成績でないこともあるが、入学してから成績や才能をぐんぐん伸ばしていくことが過去の事例から「分かっている」ので、自信を持って特待生を出しているということでした。

田中先生は、工学院でも、和洋九段のPBL型授業と同様、ステップ型のプロセスを経た思考力入試を実施していて、受験生が何かに気付き変容する瞬間があるということを指摘します。そのような生徒は、学校に入ってからも自分のやりたいことを見つけ、それを探究していこうという自己変容型のマインドセットを持つようになるということでした。

首都圏模試センターの北一成所長は、新タイプ入試の受験生の受験率や入学率の高さに触れ、学校のカリキュラムがよく分かったうえでそういった入試を受験している層が増えていること、そして4年ほど前にはそういった入試に批判的だった学習塾の態度もだいぶ変わってきたことを指摘します。

パネラーの先生方が一通りお話をされた後、和洋九段の生徒たちとの対話が始まりました。PBL型授業が自分をどのように変容させたかという質問については、多くの生徒が、プレゼンテーションなど自己表現の場を経験することをきっかけとして、自分が変わったと話してくれました。クラスメートに積極的に質問したり、自分の意見を述べることに自信を持てたりしたことが成長を実感する経験として共有されました。

先生方からは、思考コードのC軸、つまり創造性を開いていく授業は、正解・不正解の中に生徒を押し込めないことが、生徒の自己表現を促進する効果につながっているという説明がありました。そのことを証明するかのように、「PBLのPは皆さんにとって何を意味しているでしょうか」という田中先生からの突然の質問に対しても、生徒は「Program」だったり「Problem」だったり、あるいは「Practice」だったりと、それぞれ自分なりの回答と説得力ある理由を述べていました。これには質問を投げかけた田中先生自身も驚いていました。

会場にいた受験生の保護者からは、家庭でどのようなことを意識したらよいかという熱心な質問もありました。「否定ではなく、違う角度からの質問を出して子どもと対話をしていく」といった回答や、「学校イベントに参加し、実際に思考力講座を体験してみてはどうか」といった回答に、頷いている保護者や塾関係者たちの姿が数多く見られました。

最後は、21世紀型教育機構のアクレディテーションチームから、21CEOの加盟校のアクレディテーションスコアの3年間推移などが紹介されました。特に、授業に関連する3つの評価項目について、PBL型授業を推進することは、生徒の高次思考を促進し、ICTの積極活用にもつながるため、全体のスコアを引きあげていることがデータ的にも検証できると、株式会社FlipSilverlining代表の福原将之氏から説明がありました。

さらに、株式会社カンザキメソッド代表神崎史彦氏からは、PBL型授業は、生徒の自己変容型マインドセットを育成するということ、そのことが、知識の出し入れをするだけの授業よりも、結果的に大学入試に関しても非常に有効であるというお話がありました。

総合司会を務めた児浦先生と田中先生は、全体のタイムキーピングをしながら、生徒たちやオーディエンスをうまく盛り上げ、セミナーの参加者の一体感のようなものを創り上げていました。最後には、参加した生徒たちや会場を提供してくださった和洋九段の先生方、そして受験生保護者や教育機関関係者の皆様に感謝の言葉を述べて散会となりました。

 

 

 

 

 

 

2020年2月16日第4回新中学入試セミナー開催

2020年は教育のみならず、政治経済社会も大きく変わる激動の年です。当然中学入試も私立学校の教育も大きく変わります。今回は首都圏模試センターの取締役・教育研究所長北一成氏をお招きし、2020年の中学入試の総括と2021年の見通しを分析していただきます。

お申し込み→定員を満たしました。多くの方にお申し込みいただきありがとうございました。

そのうえで、「新タイプ入試」や「新しい学びの経験」を生み出すPBL型授業の成果を共有します。PBLは、すべての授業でPBL授業を実践する実績を生んできた和洋九段女子のモデルをご紹介します。

そして、それがモデルで終わるのではなく、実際に生徒がナビゲーター役を果たすワークショップ体験もしていただくプログラムになっています。新しい学びの経験は、実際に体験してみないとわからないことが多いのですが、今回、PBLによって生徒自身が創出したSGDsスゴロクワークショップを行います。

和洋九段女子のPBLはProblem based Learningから自らのミッションをもったマイプロジェクトを発見するProject based Learningに発展していきます。その成果が今回のSDGsのスゴロクワークショップです。

SDGsに取り組んでいる企業やNPO団体、国連などとコミュニケーションをとりながら、日々アップデートを続けるこのワークショップ実践を通して、生徒は探究の楽しさから凄みを感じるまでになります。生徒がどう感じどう考えているかは、パネルディスカッションで議論になるでしょう。

また、このような新しい学びの経験の実践の成果の保障をどのように組み立てるのか?欧米ではあたり前に行われているアクレディテーションの手法も公開します。新しい学びの経験の生まれるわけ、その作り方、そして評価の仕方についての動きは、2021年の中学入試の変化とシンクロする動きです。

まだまだ、このことの重要性に気づいていない人も多いでしょう。希望は幸せの青い鳥です。すぐ近くにいるのに気づかないものです。ぜひいっしょに小さな青い鳥をつかみましょう。

プログラム(敬称略)
 
総合司会 児浦良裕(聖学院21教育企画部長)×田中歩(工学院教務主任) 
 
13:00~13:30 中学入試のさらなる動き 基調講演Ⅰ
  「2020年度中学入試の総括から考える2021年度中学入試の動向」
     北一成(首都圏模試センター取締役・教育研究所長)
13:35~13:55 新しい人材育成としての新タイプ入試とPBL 基調講演Ⅱ
  「未来を拓くグローバル教育×PBL」
     中込真(和洋九段女子校長)
14:05~14:35 SDGsスゴロクでPBL体験 生徒によるワークショップ
  「PBLで生まれたSDGsスゴロクワークショップ」
     和洋九段女子の在校生がファシリテーター
14:45~15:30 中学入試が教育を変える パネルディスカッション
   「多様な中学入試とPBLの未来への役割」
     北一成(首都圏模試センター取締役・教育研究所長)
     新井誠司(和洋九段女子教頭)
     児浦良裕(聖学院21教育企画部長)
     田中歩(工学院教務主任)
     和洋九段女子生徒
15:40~16:00 21世紀型教育の成果 トークセッション
     アクレディテーションチーム
     鈴木裕之(GLICC代表)
     福原将之(株式会社FlipSilverlining代表)
     神崎史彦(株式会社カンザキメソッド代表)

 

「21世紀型教育カンファレンス」を実施しました

12月15日(日)に工学院大学新宿キャンパスのアーバンテックホールで「21世紀型教育カンファレンス」を実施しました。環境破壊や格差社会を生み出してきたこれまでの教育から決別し、循環社会にコミットする21世紀型教育の時代が本格的に到来したことを確認するカンファレンスとなりました。  by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家

折しも2021年の大学入試改革が完全に骨抜きになったことで、明治時代から本質的には変わることのできない日本という中央集権国家を私たちは目の当たりにしています。しかし、そこに静かなる信念を持って、来るべき社会への準備教育を行っている「志ある私立学校」があります。その連合こそが21世紀型教育機構(21st CEO)です。

CEFRのC1レベルに到達している生徒の比率や、PBLの授業実施率、生徒の多様性率など、細目で80項目にも渡る規準を設けた評価を外部のチームによって実施し、厳密にスコアを適用することで自らの教育の質を高めてきた学校の思いや成果が明かされました。

PBLやSTEAMなどの重要性についていち早く提唱してきた21st CEOでは、単なる授業テクニックといった次元でこれらの重要性を訴えているわけではありません。グローバルゴールズを達成する地球市民として行動することや、Growth Mindsetを持って常に成長し続けようとする上で必須であることこそが、これらの授業の本質なのです。

今回のカンファレンスで明らかになったことは、21st CEOが2020年から2024年にかけて次なるブレイクスルーを起こすであろうということです。それは教育の質の面で国家というくびきを乗り越えていくことにつながるでしょう。問題を解決するためにはそこに踏み込む必要があることが今回のカンファレンスではっきりしたのです。

第1回21世紀型STEAMフォーラム in 工学院  実りの秋の学びに。

2019年10月27日(日)、工学院で、「第1回21世紀型STEAM教育フォーラム」を実施しました。会場設置からフォーラム運営まで、工学院の教師と生徒の皆さんが知力と機動力を発揮。盛会のうちに幕を閉じました。

9人の在校生(中1・中2)がマイクラのファシリテーターを行うだけではなく、すべてのセッションに参加。さすがは、デジタルネイティブZ世代。テクノロジー、エンジニアリング、デザイン思考、創造力を発揮。未来の学びは、ここにあるということを参加者全員で共有できたと思います。

第Ⅰ部は、まずはSTEAM教育体験。マイクラで「理想的な学食づくり」についてチームで議論し、議論した内容を工学院生が、マイクラで即興的に具体的に学食空間を創り上げていきます。解題の部で、後藤先生は、今回のワークショップはプランニングを精密にやるのではなく、話し合いながらそこで同時に創造物が生まれてくるブリコラージュ発想で行いましたと解説がありました。

MITメディアラボのレズニック教授のクリエイティブラーニングの紹介もあり、MITメディアラボが大事にするプレイフルやハーバード大学が大事にする野生の思考というものを体験したわけです。

第Ⅱ部のワークショップでは、PILアプリの体験。今度は、綿密にプランニングされたアプリを活用することで、実は思いもよらない気づきが生まれるという制約の中で、推理と真理のギャップからクリエイティビティを生み出す教科授業の環境の体験でした。

第Ⅲ部は、パネルディスカッション。第Ⅰ部、第Ⅱ部のベクトルが一見反対の2つのSTEAM教育体験について、気づきを共有する対話です。パネリストには聖学院の児浦先生もかけつけ、工学院生も交えて、進行していきました。

モデレーターの福原氏は、途中、聴衆側という役割をとっぱらうために、スピードデートという対話型のアクティビティを挿入していました。

参加者側からも質問や提案がでるなど、柔らかい共感力あるディスカッションがホールに広がり、幕を閉じました。知の実りのあるフォーラムになりました。みなさま、ありがとうございました。

和洋九段女子が新しい社会を開く(2)

―みなさんにとって、SGDsの取り組みは、学校の教育を超えて、かなり社会に結びついているのですね。すてきですね。ということは、この活動は、中3が終わっても続くわけですよね。東京オリンピック・パラリンピックの話まででているわけですから。
 
「今年の5月にシンガポールの研修に中3全員で行ってきましたが、SDGsの取り組みはそれほど活発ではなかったし、シンガポールの同じ世代の生徒と話しても、知らないという反応でした。何かいっしょに考えていくことはできると思います。」
 
 
 
「シンガポールは急激に経済を発達させたから、米国と同じで環境問題にあえて関心をもたないのかもしれませんが、一方で今まで企業の方と話をしていると、SDGsの問題、特にCO2排出など削減に取り組まないと、経済リスクがあることがわかってきているので、無視はしていないはずです。もっと話し合いが必要です。」
 
「私の場合は、今回国連とネットワークを結ぶことができたので、将来は国連にもっと提案していけるようになりたいですね」
 
 
「私は、スゴロクだけではなく、もっといろいろなゲームを開発していけばよいかなと思っています。」
 
「今回SDGsに関連する取り組みをして感じたのは格差の壁ですね。富裕層は、困っている人たちにもっと目を向け、助ければよいはずなのに、そういう動きは少ないです。私は自らはお金をもうけ、困っている人に還元できるファンドを作ったりしたいと思います。」
 
「私はまた違うアプローチかな。企業とか国連とかそういう大きな団体を動かすことも良いと思いますが、私は小学校の時赤い羽根募金の活動を体験したりして、草の根運動の大切さを実感しています。地域の人が、駅を活用した時に、あっこういう大事なことがあるんだと気づいてもらえるような掲示や呼びかけをしたいと思います。SNSなどの活用もしたいですね」
 
以上のように、SDGsスゴロクプロジェクトメンバーとのインタビューの一部を見てもらいましたが、和洋九段女子のSDGsのプロジェクトの取り組みが、たんにSDGsとは何か知識レベルの調べ学習で終わらずに、企業や国連やユネスコなどの団体と対話レベルで結びついていることが了解できました。
 
 
それだけではなく、さらに多くの人々を巻き込み、SDGsのグローバルゴールズを共に解決していくための大切な問題意識を共有していく社会貢献活動ともいうべき広がりをもっていることも分かりました。2020年東京オリンピック・パラリンピックで社会的インパクトを生みだすエネルギーが蓄積されていることが実感できたのです。
 
さて、和洋九段女子という女子校が、このような本格的なオーセンティックなプロジェクト学習を、学校挙げて行っていることは、歴史的な目で眺めると、相当大きな意味が二つあります。
 
一つ目は、SGDsに取り組む姿勢は、世界共通の根本問題を取り扱うということを意味しています。教科書の世界の知識の領域では、世界共通の根本問題を掘り当て、それをいかに解決していくか思考し、実際に活動につなげていくことはできません。これは同校のすべての授業がPBL型授業で行われているということにも密接な関係があるでしょう。
 
さて、なぜ根本的問題かと言うと、外務省のホームページにはこうあるところからもわかります。
 
「持続可能な開発目標(SDGs)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。」
 
SDGsは、全ての国にとって普遍的な問題だということが明快に表現されています。しかし、歴史的に見ると、この環境問題や格差問題などのグローバル・イシューは、2001年になってはじめて国際的に意識されたわけではありません。
 
1972年にローマクラブが公表した「成長の限界」が端をはっしています。このまま世界の問題を放置しておくと100年で地球は限界に達してしまうという警鐘を鳴らしたのです。そこから、様々な国際環境会議やフォーラムが毎年のように開催されていますが、公表以来、47年がたっています。削減が進んでいるという見方もありますが、昨今の凄惨な事態を引き起こしている自然の猛威やテロの日常化を見ていると、ますます成長の限界は近づいている切迫感を感じないわけにはいきません。
 
 
SDGsへの取り組みは、それゆえ学びの根源的な問題だといってよいでしょう。和洋九段女子はそこに立ち戻って、PBL授業や活動をしているのです。
 
二つ目は、SDGsのキーワード「持続可能な社会」を示す“Sustainable Development”という言葉が生まれたときの重要な意味がここには暗示されています。その意味は女子校だからこそなおさら重要なのです。実は、この“Sustainable Development”という言葉は、1987年に誕生しました。
 
1984年に、「環境と開発に関する世界委員会(WCED)」が設置されました。委員会は、1987年、報告書「我ら共有の未来(Our Common Future)」を発表して、これまでの議論やリサーチのまとめを報告しました。このときのリーダーがノルウェーの首相のグロ・ハーレム・ブルントラントさんです。この報告書は、「ブルントラント・レポート」と呼ばれる程です。グロ・ハーレム・ブルントラント首相は、ノルウェー初の女性リーダーです。オスロ大学卒業後、ハーバード大学でも学んだ医者でもありますが、そのときの世界ネットワークが、ノルウェーのみならず、世界の社会的枠組みを変える大きな影響力を与えるのに一役買っています。とにも、社会的イなパクトを生みだした女性なのです。
 
 
和洋九段女子の女子校教育のモデルが、もしかしたらグロ・ハーレム・ブルントラントさんの生き方と親和性を持っている可能性が高いのではないでしょうか。
 
第一次産業革命以来、化石燃料をつかって技術革新を行い巨大な男性中心社会や組織が造られました。その中で、子供や女性や貧困層は、虐げられてきました。
 
ところが、第二次産業革命、第三次産業革命が成長の限界を生み出してきたことが明らかになり、徐々にその抑圧や格差は問い直されるようになりましたが、依然としてそれは解決されていません。
 
それが、今年9月23日にニューヨークで開催された「国連気候アクション・サミット2019」で、スウェーデンの16歳の少女グレタ・トゥーンベリさんが発した演説が象徴しているように、金融業をはじめとする多くの企業が、国を超えて、CO2排出ゼロにしようとか、AI社会による限界費用ゼロ社会を推し進めようとしています。
 
第4次産業革命は、今までマスクをかけられてきた化石燃料活用の根源的な問題が明らかになっていく時代です。
 
それを明らかにする活動のリーダーシップを発揮するのは、抑圧されてきた側として当事者だった女性によること以外に考えられないでしょう。女子校は、第三次産業革命までの社会を築いてきた男子の目を気にする必要がありません。遠慮する必要はないのです。それがゆえ、自ら今までにない新しい社会や世界を描くことができるでしょう。
 
男子校や共学校の男子は、いったん自分たちが抑圧する側にいることを認識しなおし、その殻や壁を自らぶち破る辛く苦しい心の葛藤を超える必要があります。それは実際にはとても難しいことです。
 
 
社会は常に中心からではなく、周縁から変わるダイナミズムが作動します。それが歴史的力学です。社会の中心にいた男性は、なかなかその居心地の良さから離れるのは難しいでしょう。それは今まで社会が変わらなかった大きな理由の一つだと言われてもいます。
 
男女共学の場合、今では苦しい立場の男性を支える女性という役割がまた働きます。心理学的にはいっしょにいるわけですから、当然の流れです。
 
もちろん、果敢にこの葛藤を乗り越えようとしている男子校や共学校もありますが、まだまだ少ないわけです。したがって、女子教育は、そこを一気呵成に発展させていくことがでます。あらゆる授業でPBLを展開して探究の構えを準備し、SDGsにこれだけ本格的にかつ真剣に取り組んでいる女子校である和洋九段女子に期待がかかるのはそういう理由があるのです。
 

ページ